人事コンサルタントのブログ -592ページ目

● 組織としての基盤作り

 社員数50名の建設業ですが、社長は部下の育成には関心がなく、 仕事の消化が最優先の状態です。 そのために幹部役員は湯舟につかっている状態であり、部下の評価・育成は全くといっていいほど出来ておりません。自分をチヤホヤしてくれる部下を可愛がる傾向にあり、仕事が出来る・出来ないは関係がないに等しい状況です。
 理想としては、いい職場を提供でき、いい評価・教育ができ、いい仕事ができる企業にして行きたいです。 とにかく基盤をしっかりさせ、この状況をどうにか、改善していきたいです。

 
 利益が上がっていて、将来の見通しも明るいのであれば 現状のままでもいいのではないでしょうか。ただ現実には、世の中そんな甘いものではないと思います。

 何らかの改革が必要だと思います。
しかし、改革には大きなエネルギーが必要です。 生半可な気持ちでは失敗に終わってしまい、もっと悪くなってしまう恐れがあります。
何かをきっかけに、不退転の決意で取り組む必要があると思います。

以下人事面から捉えると、次のようにすすめるとよいのではないでしょうか。

1.きっかけを捕らえる
 社長交代、赤字計上、同業者の倒産など、身近にこのままではいけないという現象をきっかけに、改革の必要性を訴えます。(将来像の提示)

2.人事関係の改革
 社員が一番関心があり、変化が実感できるのは人事に関することです。
 組織変更、人事異動などによりまず一つの変化を与えます。
 さらに、賃金制度、評価制度の変更を告げ、キーになる社員を選定して自社にあった賃金制度作成に入ります。(専門家を入れてあるべき方向を示す)

3.自社にあった人事制度作りの中で、世間の状況、当社の状況を理解させあるべき姿を考えさせます。

4.当然人事制度は、公正処遇に結びつくものにします。

5.評価の研修の中で、管理職としての立場役割を教えます。

6.反発する人も出てきますが、強いリーダーシップですすめます。

7.50人の社員であれば、2~3人退職することも考えられます。

いずれにしても、改革を進める側の強い信念が人を動かすと思います。 そして、厳しい状況のときに行う方が共感を得られます。




著者: 伊藤 守
タイトル: コーチング・マネジメント―人と組織のハイパフォーマンスをつくる

● ラジオ体操に遅れる人の評価?

 始業は朝8時なのですが、会社全体で7時55分からラジオ体操をしています。このラジオ体操にちょくちょく遅れるのは規律性でマイナス評価してもよいのでしょうか?

 難しい問題ですが、基本的には人事考課には反映しないと考えるのがよいでしょう。就業時間前であることあり、業務に関係ないわけですから人事考課にも関係しません。
 人事考課の勉強をすると、なんでもかんでも人事考課に結び付けて考えがちですが、就業時間前のラジオ体操とか、職場での挨拶とかは、人事考課には関係ありません。
 このようなことは、人事考課に反映するから行うとか反映しないから行わないというものではなく、みんなで気持ちよく行うために行うわけであり、人事考課とは関係なく、指導アドバイスすべきことではないでしょうか。

● 人事考課と評価の違い

 人事考課と評価を区別して考える必要がある。
評価とは「物の善悪・美醜などを考え、価値を定めること。」と辞書に書いてあった。
人事考課とはその評価の中で「仕事上の行動や結果、能力を評価すること」である。


 仕事をする中で、誰をどのように評価するかということは、基本的に自由であり、気に入ったとか、ウマが合うとか、いろいろあるであろうが、基本的にどう思うかは自由である。
そして、それにあった付き合いをすればよいことである。
自分にとって都合がいい人、都合よく対応してくれる人が、よい評価になるので当然のことである。

 ただ問題は、そのような個人の判断で、企業で行う人事考課を行ってしまうことある。
人事考課と評価とは別物である。
年に2回か3回、人事考課を行う時は、そのような個人的な判断ではなく、決められたルールと基準で行うことが「人事考課」なのだ。それを混同してしまうから、ややっこしくなるのである。

 人事考課は一定のルールと基準によって仕事上の行動や結果を評価することであって決して人物評価や好き嫌いの評価ではない。

 例えば、病院の先生が「血圧はかなり低いけれど、私好みの人だから、今日は健康ということにしておきましょう」と診察したら、誰も相手にしない。
仕事のできない人に「仕事はできないけれど、俺とお前の関係だからAと評価したよ」ということは、上記の病院の先生と同じことを言っていることになる。そんな上司は誰も相手にしないはずである。(それで喜ぶ人もいるが・・・)

 でも現実は、そのようなルールや基準によって判断するのではなく、考課者の好き嫌いや、価値観や、自分に都合のよいと思われる評価付けになっているケースが多い。
だから、会社に仕事をしにきているはずなのに、仕事よりは上司にうまく取り入った方が評価がよかったり、要領のよい人が出世したりする。
 そしてその要領のよさで出世した人が、また、部下の評価をするわけだから、同じことの繰り返しになってしまう。
 これを続けたらいずれ企業は消滅してしまうであろう。

 人事考課する前に、人事考課のルールと基準を明確にすることが大前提である。
これをしないで、人事考課するから「単なる評価」になってしまい、逆効果となってしまっている。
 まず、人事考課制度のルールと基準を明確にすることが、人事制度構築の成功の秘訣である。

(それから、評価する人の意識改革も必要)

● 好き嫌いによる評価

 人事制度の説明会をすると、よく「上司の好き嫌いにより評価されるのではない」という不信感を持ち、質問や反対意見を言う人がいる。

 確かに人間が行う以上、そのようなことは考えられるが、それらを極力排除するために、考課者訓練を実施したり、目標管理を導入し客観的に評価できるようにするわけである。しかし、それでも「好き嫌いの感情が入るのではないか」と納得しない人がいる。多分、過去によい評価を受けたことがなく、それは上司の「好き嫌い」のせいだと思っている人であろう。

 そんな人には次のように話すしかない。
「確かに、最終的には好き嫌いの感情が入るかもしれませんね。もしそうだと思うのであれば、上司に好きになってもらえるように、努力すればいいのではないでしょうか。上司はどんな人が好きだと思いますか?それは評価のいい人なんですよ。」
 上司だって評価される。自分の評価にプラスになるように仕事してくれる部下は好きになるであろうし、マイナスになる部下は嫌いになるのは当たり前のこと。日ごろの付き合いは別にして、評価するときは、より公平に評価しようとするのは、上司自身のために絶対必要なことである。中途半端な評価や感情的な評価により、部下が反発して部門の業績が落ちたら自分自身マイナスになってします。部門業績をあげるためにも、より公正な評価をしようとするのは、ごく自然のことである。

 年功序列時代の感情による評価をイメージしているのは、部下の方。考課者は経営環境の厳しさを認識して、必死に公正に評価しようとしている。
 (危機感の不足している会社はそうでもないが、・・・・)

● 自分の仕事をしないで他人の応援をするのは?

 受付にいつもの加藤さんに変わって田中さんが座っていました。「どうしたの?」と尋ねますと、「加藤さん、風邪ぎみで病院に行っているんです。その間だけ、私が見てあげることにしました」という返事です。田中さんはよく他人の仕事を手伝ってくれます。この間は秘書室でタイプを打っていましたし、1週間ほど前には営業で封筒に切手を貼っていました。彼女は会計課ですが自分の仕事にはあまり身が入っておらず、他人の仕事を手伝うことばかり熱心です。このような場合どう評価したら良いでしょうか。

 会社の中にはそれぞれ持ち分というものがあります。
みんながそれを守ることによって組織の中の分業が成り立っています。
ところが、個人が持ち分を守ることだけにあくせくし、他人の仕事に注意を払わなければ全体としての効率は低いものになってしまいます。
そこで、それぞれの持ち分の接点のところでは助け合い、力を合わせる必要があります。それが協調性です。
 しかし、協調性を云々できるのは自分の持ち分を一通り果たした上でのことです。
つまり、責任性が『B』以上でないと協調性に『A』をつけることはできません。
自分に任されたことをやらずに他人の手伝いばかりしているのは、単なるでしゃばりに過ぎません。

 このケースの場合田中さんの日頃の行動から、責任性が『A』(困難を克服し、自分の業務を最後までやり遂げようとした)、または責任性が『B』(自己の業務を最後までやり遂げようとした)であれば、協調性を『A』と考課してもよいです。
 文面から判断して、責任性が『C』(自己の業務はほったらかしになっている)とすれば、単なるでしゃばりとしか取れないわけですから協調性の考課対象とはなりません。
 もし他に協調性を考課できる行動(チームワークを高めるようとする態度など)があった場合、その度合いに応じて『B』以下に考課をすることになります。
 

● 恩着せがましい協力の場合の評価は?

 仕事の応援を頼むといつも手伝ってくれるのですが、恩きせがましいことを言ったり、いやな顔をしたりします。この場合の、協調性はどう考えるとよいでしょうか。

 この場合も、事実だけを冷静に判断します。いつも手伝ってくれるのですから、協調性「B」となります。人のいやがる仕事や緊急の頼みごと、また、自分自身が忙しい時の手伝いであれば「A」となります。
 イヤイヤであっても、手伝ったという事実に着目してください。
 逆に、非常に愛想がよく、調子のいい事は言うがいざとなると「うまい理由」をつけて手伝わないという場合の方が問題です。
 話し方や態度、日頃の人間関係などでつい感情的になってしまいますが、人事考課をするときは冷静に事実だけに着目するようにします。

● 遅刻の評価は?

 遅刻をすると規律性でマイナス評価ということですが、理由のある遅刻や不可抗力での遅刻もマイナス評価になるのでしょうか?

 いいえそんなことはありません。規律性は取り組み姿勢や意欲のことを評価するわけですから、そのような理由のある遅刻は規律性には反映しません。規律性に反映するのは本人怠慢による遅刻のみということになります。

 ただし、遅刻に関して言えば、いかなる理由があれ遅刻した時間は仕事をしていないわけですから「no work no pay」の原則で賃金カットになるのは当然です。

● 残業自粛時の残業の評価は?

 残業自粛の指示があるにもかかわらず、残業をしているのは、どう評価しますか。

 本来残業は残業申請を出して、管理者の許可があってはじめて行うものですが、中小企業の場合は、ほとんど事後承諾になっている場合が多いようです。
したがって、上記のような質問が出てくるものと考えられます。

 これは、その残業の内容によってちがってきます。いくら残業自粛といっても、会社業務に支障をきたすような重要な仕事が残っているのであれば、残業してでも行うべきです。しかし、翌日行なっても間に合うのであれば、「残業自粛」を優先して考える必要があります。

 すなわち、その残業の「重要性・緊急性」と「残業自粛」の優先度で決まってくるわけです。
「重要度・緊急度」の低い仕事を残業で行なっているのであれば、規律性「C]、「重要度・緊急度」の高い仕事を残業で行なっているのであれば、規律性は「不問」で、責任性はその理由により「B]または「A]となります。

● 残業拒否の場合の評価は?

 残業を拒否するのは、どう評価すればよいですか。

 まず、規律性について考えてみましょう。
よく残業命令と言われますが、残業は命令できるものでしょうか。厳密には、命令とは業務時間内で通常の担当業務内においてのみ、効力があるわけです。したがって、残業は命令できません。あくまでも依頼になります。逆に、時間内で通常の業務内のことであれば、言い方は依頼であっても、命令になります。
 命令は受けて当たり前、標準B、拒否すればC・Dが妥当でしょう。
しかし、依頼は受ければ、協調性でプラス評価(B以上)、拒否しても不問ということになります。
 つまり、残業は命令ではなく、あくまでも依頼であるため、拒否しても規律性には該当しないということです。

 次に、責任性を考えてみましょう。
これは、残業の理由によってちがってきます。会社の都合で突然残業が必要になったり、仕事量そのものが多くて残業が必要な場合は、本人の責任は問えませんので残業を拒否しても不問とすべきです。残業を引き受けたのであれば、組織への協調ということで協調性でプラス評価、または、量的チャレンジということで積極性でプラス評価できます。本人のミスや能力不足で残業が必要になり、これを拒否したのであれば、責任性でC・Dと判定できます。この場合、残業を行って当たり前、責任性Bが妥当でしょう。

ただし、自分の責任で残業が必要な場合でも、残業できない理由があり、それを事前に連絡し、手を打ったのであれば、残業できなくてもマイナス評価はできません。

 ここでいう、段階BとかC、Aはこの一つの事実に対して、ということであり、これだけで、半年の評価が決まるということではありません。
 また、プラス評価というのは、その度合いにより、それぐらい当たり前Bの場合と期待以上Aの場合があるということです。

◆ 補足説明

 「就業規則、36条協定があれば、残業は「命令」てぎますし、就業規則で懲戒処分の対象ともなり得ます。」というご意見をいただきました。
確かにその通りだと思います。(むやみに拒否すれば)

 現在の法律の解釈として、
「36協定の範囲内であれば、正当な理由がなければ残業は拒否できない。」が通説だと思います。
ということは、「36協定の範囲内であっても、正当な理由があれば拒否できる。」という意味でもあります。

 問題は「何を正当な理由か」という問題であり、たとえデートであっても本人にとって一生を左右するものであれば、正当な理由となると思うのですが、いかがでしょう。

 また理由の内容はともかく、その理由は本人が申告するわけであり、それによって、「正当化かどうか」が決まるのであれば、絶対的命令にはならないのではないだろうか。
(本人申告による理由により、従わなくてもよいことがある)

そのような理由で、あえて、「依頼」という言葉を使っています。

誤解のないようにお願いします。
「残業はむやみに拒否できるということではありません。あくまでも正当な理由があれば拒否できるということです。」

◆ 補足の補足

 私は、残業を命令で「しょうがなく行う」ものではなく、各人が残業の必要性を感じて、行うものだと思っており、そのように日頃から、意識付けすることが大事だと思っています。

法律や36協定をたてに、嫌がっているものを無理やり残業させるのではなく、そうならない様に日頃の意識付けをしっかり行うことの方が大事だと思います。

命令しなくても、必要性を感じて、従業員が自ら申告してくるように、仕事の重要性や目的を知らしめることが経営としては大事だと思っています。
その意味で、管理者研修等で、残業は命令でさせるものではなく、必要性を理解させて、行うものである。一方的命令はダメだ。といっています。

● 有給休暇を使い果たした場合の評価

 有給休暇を全部使い果たしている人と、まったく使っていない人の評価は、どう考えればよいのでしょう。

 有給休暇を使った、使わないは人事考課上まったく関係ありません。
 ただ、仕事の処理量として、有給休暇を使った人と使わない人がちがっていれば、それに対しての評価(成績考課)はちがってきます。
もし、仕事の処理量が同じであれば、短時間で仕事をこなした人(有給休暇を全部使った人)の方が能力又は意欲があると考えてよいでしょう。